儀助氏が私に向い、
「先ほど、塩田氏がちょっとお話した事でしょうが、あなたのチャボが聖上のお目に留まり、御用品に遊ばさる旨仰せ出されたにつき、当会の光栄この上もないこととお受けを致しました。それでこの件はこの松尾がすべての責任を引き受け、若井とあなたとの間のことは充分な解決を附けますから、どうかそのおつもりに願う。何しろ、本会無上の光栄で、あなたに取っても名誉この上ないことである」
という話で、まるで煙《けむ》に捲《ま》かれた形。私も若井氏の思惑を心配したがこうなってはどうすることも出来ませんでした。
そうして、自作は、宮内省御買い上げという下げ札が附いて開会期中そのまま陳列することにして公衆の展覧に供した。これはお伴《とも》の方《かた》が直ぐお持ち帰りになろうというのを、本会の光栄を一般奨励のため公衆に見せたいからと御願いしてお許しを受けたのであるということでした。而《しか》して、この作と、濤川氏七宝の花瓶と並んで金賞となりました。
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店
1995(平成7)年1月17日第1刷発行
底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房
1929(昭和4)年1月刊
入力:網迫、土屋隆
校正:noriko saito
2007年2月15日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全2ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
高村 光雲 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング