た。
そして、そういう西洋画の行き方に彫刻の方をやるには、やはり西洋画が写生を主としたと同じように写生を確《しっ》かりやらなければならないと、こう考えました。今日から見ると、甚《はなは》だ当り前のことであるが、とにかく、私は此所《ここ》へ着眼して一意専心に写生を研究しました。ちょうど、それが画家が実物を写生すると同じように刀や鑿《のみ》をもって実物を写生したのである。毛の上に毛の重なり合い、あるいは波打ち、揺れ動く状態等緩急抑揚のある処を熟視して熱心にやりました。で、万事がこの意気であるから、動物の骨格姿勢とか、草木、果実、花などの形においてもやはり同じことで、いろいろと実物を的にして彫刻するということに苦心したのであります。
この研究が一、二年続く中に、何時《いつ》となく従来の古い型が脱《と》れて、仏臭が去ったようなわけであって、その頃では、こういってはおかしいが、私は新しい方の先登《せんとう》であったのであります。
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店
1995(平成7)年1月17日第1刷発行
底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房
1929(昭和4)年1月発行
入力:しだひろし
校正:noriko saito
2006年9月8日作成
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