もすることが出来ようと思われる所を、科学の発達しなかった時代、即ち、常識を使うより外《ほか》道のない時代に、どうして目的を達するだろうかという所に、興味があるのである。別項に掲げた拙稿「世界裁判奇談」の中にも書いたが、大岡越前守その他の名判官の裁判物語は、その名判官の機智の働かせ方が興味の中心となっている。現代ならば訳なく解決出来ることでも過去の時代にはそうはいかない。そのいかなさ[#「いかなさ」に傍点]加減即ち、束縛された限局された活動範囲で、しかも見事に事件を解決するという所がいかにもうれしいのである。オルチー夫人はその点をねらって、歴史的探偵小説に大成功をしたと言い得よう。いう迄もなくフランス大革命の際、貴族たちは人民政府の命によって片っ端から、断頭台上に送られた。その可憐の貴族を英国の貴族サー・パーシー・ブレークネーが、厳重に警戒されたパリーから、巧みに救い出して英国へ連れてくるのであるから、事件そのものが既に面白い所へ、如何にして人民政府の眼を眩《くら》ますかが興味の中心となり、あまつさえ背景がフランス大革命時代のパリーと来ているのであるから、所謂《いわゆる》三拍子揃った訳で
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