た時の心持は、今から思ってもぞっとします。即ち友人は、立派な粟粒結核《ぞくりゅうけっかく》だと申しました。粟粒結核! それは死の宣言と選ぶところがありません。妻はよほど以前から肺を冒されて居たのを、我慢に我慢して来たので遂に取りかえしのつかぬ運命に陥ってしまったのです。私は絶大の悲哀に沈みましたが、何だか其処に一縷《いちる》の希望があるようにも思いました。いう迄もなく人工心臓によって妻を救い得《う》るだろうという希望です。
 妻は私と友人との顔つきを見て、早くも自分の運命を察したと見え、友人が去るなり、
「わたしもう治らぬのでしょう?」
 と訊ねました。
 私は返答に行き詰り、黙って首を横に振りました。
「わたしにはちゃんとわかって居るのよ。然し、わたしは死ぬことがちっとも怖くない」
 その声がいかにも希望に満ちて居《お》りますので、私は思わず、
「え?」といって彼女の顔を見つめました。
「人工心臓があるのですもの。ねえ、わたしが死んだら、すぐ人工心臓を取りつけて頂戴、わたしはきっと甦ります」
「そんなことを言っては悲しくなるじゃないか。気を大きくして居なくてはいかん」
「あなたこそ気
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