らず、私たちの止宿の室をそのまま病室として、妻が看護婦になって介抱してくれました。最初は凡そ十グラムほど咯血しましたので、直ちにベッドの上に横わり、内科に勤務して居る友人を呼んで診《み》て貰いますと、とりあえず止血剤を注射し、絶対安静せよと忠告をしてくれましたから、私は仰向きになってじっ[#「じっ」に傍点]として居《お》りました。
ふと、夜半《よなか》に眼がさめると、胸に、はしかゆいような擽《くすぐっ》たいような感じがしました。はっと思うと、次の瞬間けたたましい咳嗽が起って、なお暖かい血は猛烈に口腔に跳ね上りました。咳嗽、又、咳嗽、妻はコップを持って来てくれましたが、見る見るうちに、コップは紅いもので一ぱいになりました。驚いた妻は洗面器を持って来て受けました。私は左を下にして横わったまま咯《は》きましたが、勢い余った血液は鼻腔の方からも突き出されて来て、顔の下半分はねばねばしたもので塗りつぶされました。胸は蜂の巣を突ついたような音を立てる、かと思うと、又、雷のようにごろごろ言いました。洗面器の半分ほどは、たちまちに充《みた》され、この儘《まま》全身の血液を咯《は》き尽すのではないかと
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