、糸子の風姿やその他のことを近藤方で研究してくると、いよいよ、糸子に仕立てて伊豆の国に行かせ、糸子が熱海へ散歩に出たときを選んで、海岸で捕らえて、すぐさま船の中へうつし、その船の中で、無理にゲルセミウムを注射して仮死に陥れたのだ。そうして、糸子の替え玉が相州屋《そうしゅうや》へ帰り、その翌日から気分が悪いといって、そのまま床《とこ》についたのだ。つまり替え玉を発見されない手段だったのだ。
さて、一方、仮死に陥った糸子を悪漢たちはそのまま連れ帰ればよかったのであるが、彼らには妙な迷信があって、一旦その仮死の身体《からだ》を警察の目に触れさせれば、途中で逮捕されることなく目的を達することができると信じているので、仮死体を春日町の空家へ持ってきて、僕たちに見せる計画をしたのだ。
そのため、君が事件に加わってきて、とうとう彼らの計画は微塵《みじん》に砕かれてしまったのだ。
誘拐団は糸子の替え玉が帰りしだい出発しようとしたのだが、ちょうど、いざ出かけようとするとき警察の手が入ったのだ。
川上糸子は、あのままずっと仮死の状態になっていたよ。彼らは、彼女の身体《からだ》を手頃なトランクの中へ
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