屋に案内されました。部屋の中には荷物がそのまま置かれてありましたが、俊夫君が電灯の光でそれを検《しら》べると、大部分は本物の川上糸子の所有品でした。
 俊夫君はスーツケースや、机などを熱心に検べましたが、ふと、鏡台の小さな引き出しから一枚の紙片を取りだしました。それは幅一寸長さ三寸ばかりの西洋紙で、その表面には記号のようなものが書かれてありました。
 俊夫君の顔には、急に明るい表情がうかびました。そうして、無言で私にそれを示しました。その表面には、次の文字が書かれてありました。
 So Bo Fa Pa, Ha Ka Aa Ci Ne Hu, Ha Fe V Bu Nu.
 私はこれをローマ字式に読んでみましたが、さっぱり意味が分かりませんでした。ついてきた警官も、物珍しそうに顔を近づけてそれを見ましたが、もとより分かろうはずがありません。
「俊夫君、君にはもうこの暗号が読めたか」
 と、私は尋ねました。
「いや、まだ分からん。しかし、多分、これを解けば、きっと重要な手掛かりが得られるだろう。さあ兄さん、これから温泉へつかって湯滝を浴びようじゃないか」
「え? 温泉につかる?」
 と、
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