そうか。変装の方へ気を取られて、これには気がつかなかった」
こう言って叔父さんは私に手紙を渡しました。私は左に、その文句を写し取り、針で孔のあけてある字だけを例のごとく点を打ちます。
[#ここから2字下げ]
叔父さん[#「叔父さん」に丸傍点]、とうとう犯人が分かりました。僕は首尾よくダイヤを取り返しました。今晩[#「今晩」に丸傍点]七時に変装してきてください。兄さん[#「兄さん」に丸傍点]を驚かしてやりたいのですから、ついでに[#「に」に丸傍点]ダイヤのサックとこの手紙を持ってきてください。あの暗号には、ずいぶん苦しい思いをさせられ[#「苦しい思いをさせられ」に丸傍点][#「苦しい思いをさせられ[#「苦しい思いをさせられ」に丸傍点]」は底本では「苦しい思いをさせられ[#「しい思いをさせられ」に丸傍点]」]ました。委細はお目にかかってお話ししますよ[#「ますよ」に丸傍点]。乱筆おゆるしください[#「おゆるしください」に丸傍点][#「おゆるしください[#「おゆるしください」に丸傍点]」は底本では「おゆるしください[#「ゆるしください」に丸傍点]」]。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から2字上げ]俊夫より
[#天から5字下げ]叔父上さま
針で孔をあけた字を一緒にあわせると、
「叔父さん今晩兄さんに苦しい思いをさせられますよ。おゆるしください」となります。
「俊夫にはかなわん」
とうとう叔父さんも、俊夫君の知恵に降参してしまいました。
かくて紅色ダイヤは、めでたく俊夫君のものとなりました。
底本:「小酒井不木探偵小説選 〔論創ミステリ叢書8〕」論創社
2004(平成16)年7月25日初版第1刷発行
初出:「子供の科学 一巻三号〜二巻二号」
1924(大正13)年12月号〜1925(大正14)年2月号
入力:川山隆
校正:小林繁雄
2006年5月5日作成
青空文庫作成ファイル:
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