江戸川氏と私
小酒井不木

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)大《おおい》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]『大衆文藝』昭和二年六月
−−

 はじめて江戸川氏の作品に接したのは、大正十一年の夏頃ではなかったかと思う。「新青年」の森下氏から同君の「二銭銅貨」と「一枚の切符」を送って来て、日本にもこれほどの探偵小説が生れるようになったから、是非読んで下さいとの事であった。早速「二銭銅貨」を読んだところが、すっかり感心してしまって、森下氏に向って、自分の貧弱なヴォカブラリーを傾け尽して、讃辞を送ったのであった。そうして「二銭銅貨」が発表されたときには、私の感想も共に発表された。
 これが縁で私は江戸川氏と文通することになった。時々長い手紙を寄せて同氏は私を喜ばせてくれた。その後、ポツリポツリ氏の作が「新青年」に発表されるごとに、私はむさぼり読んで、江戸川党となった。
 関東の大震災の後、私は田舎から名古屋に移り住んだ。その翌年中、同氏はやはりポツリポツリ発表した。いずれも傑作ばかりである。私は、江戸川氏にむかって、探偵
次へ
全4ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング