じ病で死にました。又、私の二人の兄も、二十歳前後に、同じ病で死にました。祖父の代から、私の家には男ばかりが生れまして、私には、父方の叔母もなければ、又、姉も妹もありませんでした。二人の兄が死んで、(もうその頃には父もすでに亡き人でしたが)私が一人娘として残ったとき、母は何とかして、私を、その恐ろしい病からのがれしめたいとひそかに切支丹《きりしたん》に帰依《きえ》して、神様にお祈りをしたので御座います。
 私が一人ぼっちになったのは、私の十三の時でした。母は、神様に向って、どうぞ、私が、世の常の女でないようにと祈りました。申すまでもなく、普通の女でありましたならば、二三年のうちに、月のものが初まれば、そのまま血がとまらずに死んで行かねばならぬからであります。傷さえしなければ、死をふせぐことが出来ますけれど、この自然に起こる傷は如何《いかん》ともいたし方がありませんから、ただ、神さまに御すがりするより外はなかったのであります。
 私も、母から、その訳をきかされて心から神さまにおいのりをしました。兄が顔に小さな傷をして、医術の施しようがなく、そこから出る血を灰にすわせて、だんだん蒼ざめて死ん
前へ 次へ
全8ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング