、いよいよ残念じゃないか」と、やっぱり、京山にも箕島の真意がわかっておりません。
「それもそうだなあ」と、仙波も考えはじめました。「けれど、とてもとてもとり戻す手段はないじゃないか」
「そこを何とか工夫して見ようじゃないか。貴様は俺より人間の身体の中のことはずっと委《くわ》しいはずだから、一つよく考えて見てくれ」
仙波はもと、T医科大学の病理学教室の小使をしていたことがあって、人間の解剖に馴れていたので、京山はこういったのです。仙波は人間の解剖をたえず見ていたので、自然殺伐な性質が養われたわけですが、いかに人体の内部のことにくわしくても、箕島の体内にはいったダイヤモンドを取り返す妙案は浮びそうにもありません。
「待てよ」と仙波は腕を組み、眼を閉じて、しばらくの間考えこみました。朝が近づいたと見えて、街から荷車のとおる音が聞えて来ました。二人は別に疲れた様子もなく一生懸命に考えました。
やがて、仙波の顔にはあかるい表情がうかびました。
「あるよ、妙案が」と、仙波はにこにこしながらいいました。
「どんなことだい?」と京山は息をはずませました。
「まあ、ゆっくり聞け」と、仙波は得意気にい
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