人開拓の田地の外、別に播種し別に刈穫せんと慾する所の処に存す。韓退之所謂務去陳言戞々乎其難哉とは正に此謂いなり、若し古人の意を※[#「足+(日/羽)」、第4水準2−89−44、284下−11]襲して即ち古人の田地の種獲せば是れ剽盗のみ。李白杜甫韓柳の徒何ぞ曽て古今を襲わん。独り漢文学然るに非ず。英のシエクスピールやミルトンや仏のパスカルやコルネイユや皆別に機軸を出さざる莫し。然らずんば何の尊ぶ可きことか之れ有らん。
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記してあるのみならず、平生予に向っても昔し蘇東坡は極力孟子の文を学び、竟に孟子以外に一家を成すに至った。若しお前が私の文を学んで、私の文に似て居る間は私以上に出ることは出来ない。誰でも前人以外に新機軸を出さねばならぬと誨えられた。先生の文章に於けるや、苦心常に此如きものがあった。先生の文は決して売らんがために作るものではなかった。其売れる売れないとは毫も文士として先生の偉大を損するに足らぬのである。
底本:「日本プロレタリア文学大系(序)」三一書房
1955(昭和30)年3月31日初版発行
1961(昭和36)年6月20日第2刷
入力:Nana ohbe
校正:林 幸雄
2001年12月17日公開
2001年12月19日修正
青空文庫ファイル:
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