態度を以て裁判長に対し、且つ不敬の言辞を弄して罵詈《ばり》し、怒号止まず。一定の場所に直立すべき事を命ずるも応ぜず」
支倉は既に此時分に裁判の日に日に自分の不利なのを悟った。彼は如何にしてか死刑を逃れ、神楽坂署長以下に恨みを述べ、懐しき妻子にも会わんものと数年間|果敢《はか》ない努力をし続けた。警察署長や神戸牧師に脅迫状を送ったのも一面には出獄の伝手《つて》にもしようと云う考えだった。所が、第一番に彼は最愛の妻子から背き去られた。裁判は見込がない。彼は最早死刑を逃れる事も出来ず、愛する妻子にさえ会う事は出来なくなった。此世に何の望みが残ろうぞ。こゝに彼の一念は「呪い」の一事に集中して終った。
彼はどうかして死を一刻でも逃れようとした。彼は呪いの為に生きた。生きて俺をこの窮境に陥れた奴を呪ってやろう、呪って/\、呪い抜いてやろう。あゝ、こゝに彼は正に一個の生きたる悪魔になって終った。
彼がいかに悪智恵を働かして、周囲の人を呪い苦しめたか。悪魔は悪を喰って生きると云う、彼支倉は日に日に悪を製造し、その悪を喰い、悪に肥っては更に悪を企てた。而も彼の悪は法律上の悪ではなかった。拘禁されて
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