はなくても、云わずにすめば支倉の迷惑は軽減すると考えていたに相違ない。
けれども結局云わねばならなくなったから、彼の一旦拒否した事は偶※[#二の字点、1−2−22]《たま/\》彼の証言に重きを加える事になって終った。
被告の利益を代表する能勢弁護士、何条黙すべき。
神戸牧師の証言重々しく、被告にとって一大事と見た能勢弁護士は直に立って、裁判長に向って証人の質問を試みたき事を要求した。
裁判長は能勢氏の欲するまゝに証人に対して質問を許した。
「只今証人の言の如く暴行云々と云う事になると、重大問題であるが、これについて被告の謝罪方法はどんな事であったか」
之は能勢弁護士の第一問である。
「それは」
牧師は弁護士を尻目にかけながら、
「小林兄弟に対して謝罪状を認める事と、本人の病気を治療する事の二つです」
「証人又は小林兄弟に於て、私通と主張するなら被告を告訴すると云った事があったか」
「私には立派に暴行なる旨自白したのですから」
牧師は冷かに答えた。
「そんな問題は起りません。然し、被告は小林兄弟に対しては私通なる旨主張していたようでした」
能勢弁護士はこゝに質問を打切っ
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