つは今云う保険会社からで、詐取された保険額約三千円の損害賠償だった。保険会社の方は兎に角聖書会社は博愛主義の基督教の宝典たる聖書の販売元だから、罪を憎んで人を憎まずと、損害賠償の私訴などを起して、今更支倉を苦しめなくても好さそうなものだが、矢張りそうは行かぬと見えて、忽ち訴訟を起した。所が流石は聖書会社で物件の差押えまではやらなかったが、そこは機敏な保険会社が直仮差押えを申請したのだった。
この家屋は浅田の奔走で静子の名義になっていた筈であるが、手続が完了していなかったか、それとも外に仮差押えをする途があったか、兎に角、家はもうどうする事も出来なくなったのだった。
唯一の望みだった家が差押えられて終《しま》ったので、静子は茫然として終った。次の面会の時に彼女は悄然として夫にその事を語った。
「家を売ろうと思いましたが、保険会社に差押えられて終いました。もう駄目です」
「なにっ、差押えられた?」
支倉の相好は忽ち変った。彼のいかつい眉が釣上り、眼は爛々と輝いて、無念そうな有様は、流石の静子もタジ/\とする程だった。
「そ、それは本当かっ!」
家を差押えられたと聞いて、支倉の憤怒
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