を持出したのではないかと云われる所がある。且自白をした原因として罪なき妻子を助けたいと、くど/\書いてあるがもとより支倉は文筆の士ではなく、獄中匆卒の間に一気筆を呵したのだから、意余って筆尽さざる恨みは十分にあり、妻子を助けたいと云う意味は早く安心がさせたいと云う意味かも知れないが、真に妻子を助けたい為に冤罪を甘んじて受けたとすると、余りに常識のない話で、それこそ大正の聖代に罪が何も知らない妻子に及ぶ筈がなく、神楽坂署員もそんな非常識な事を云って彼を威かす筈もないのである。支倉の上願書は尚続く。
[#ここから2字下げ]
「さわれ絞首台に上がらずして、なんとかして妻子を助ける工夫はなきかと暫し考えたのであります。考えつきました。あります/\。我兎に角此後署長さんなり根岸、石子両刑事の処置を見ばやと吾は謀られまじ吾反って先を謀らん。謀《はかりごと》若し中途にして破れなば吾は絞首台に上らず自分から自害して男を見せん。夫れまでは吾は監獄に行き大福餠々々と精神病となり精神病者として取扱いを向う或期間受けん。自分所有の家屋妻子の所有とたりたらば、妻子はよもや今日々々の糊口には困るまじ(我死にて妻子
前へ
次へ
全430ページ中313ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
甲賀 三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング