然らば前回被告が述べたごとく貞を井戸に入れた点はどうじゃ。
古我判事は鋭き一問を発した。
古我判事から貞を井戸に投じたと云う自白はどうだと、鋭く突っ込まれた支倉は恐れる色もなく答えた。
答 入れませぬ。警察に於て徹夜せしめ、入れたろうと云われたのを、其通りと申立をなし、又当予審に来てもその通り申すよう警察で云われた為井戸に入れたと申しましたが、実際は入れません。
問 然らば前回被告の述べた其余の事実は如何。
答 皆嘘です。
高輪の私の宅に私が放火した事もなく土方に放《つ》けさせた事もありませぬ。何処から火が出たかも存じませぬ。私は屡※[#二の字点、1−2−22]《しば/\》火事に遭いましたけれども嘗《かつ》て放火はいたしませぬ。
問 被告は今回逃走中|密《ひそか》に妻に会い、写真を破棄せしめたか。
答 私は破棄せしめませぬ。浅田が破棄した方が宜しいと云ったのです。
第二回の訊問は否認を以て始まり、否認を持って終った。この終始一貫した犯罪事実の否認は古我判事にどう響いたであろうか。
古我氏は既に今までの取調べに於て、朧ながらにも或る結論を脳中に画いていた。けれども裁
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