の布片は井戸から出た当時はこんなに切れないでもっと繋がって居ました。それにこんなに泥はついていませんでしたけれども、色はこれ位でした。赤い方は襦袢の襟で青い方は帯の裏になっていたと思います。
 支倉さんは当時確に見に来ていました。然し口は利きませんでした」
 井戸から上った死体の検視をした吉川医師が古我判事に答えた所は次の如くである。
「推定年齢を二十乃至二十五としたのは身長及一般の体格から推測したので、骨格の構造と乳線から女子と断定したのです。異例を考えれば十六歳位とも見られない事はありますまいが、私は検案書の如く推定いたしました。死後経過は六ヵ月乃至一年と見ました。自殺か他殺かと云う事はとても判別出来ませんでした。只今お示しの布片の内海老褐色のものは多分当時の物と存じます。其の他の布片については何とも申し上げられません。尚頭蓋骨は何分年数が経って居りますので確《しか》と申上げられませんが、当時のものより心持ち小さい様に思われます」
 以上の証人の言から略※[#二の字点、1−2−22]古井戸より上った死体が行方不明になった小林貞である事が確実になったので、古我判事には漸く朧げながら事
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