》げていたとは思われないのである。
 が、一方、支倉喜平に対しても彼が獄中で縷々として冤罪を訴えた心事は実に憐むべきで、涙と戦慄なしには彼の獄中記を読む事は出来ないであろう。彼に対しても又数多の同情者の現われたのは蓋し当然である。
 面白くない事を縷々として述べたが、之だけの事情をすっかり呑み込んで置いて貰わないと、これから展開する支倉対庄司署長の闘争。それに、も一人東都弁護士会にその人ありと云われた能勢氏と云う豪傑が現われて、三つ巴になって相争うと云う本篇の最も興味のある所が理解出来ないのだ。
 事件はどう云う風に転回するだろうか。


          断罪

 神楽坂署で潔く自白をすませた支倉は、欣々然として検事局に送られた。欣々然と云う形容は少し誇張に過ぎる嫌いがあるけれども、少くとも彼は全く解放せられた気持だった。その気持は神楽坂署で数日間続行訊問をやられた苦痛から逃れる事が出来た為か、又は積悪を自白して良心の苛責から免れて、安住な心の落着き場を見出した為か、それは支倉自身に尋ねて見なければ分らぬ事であるが、彼は恰度悪戯をした小児《こども》がひどく叱られてしょげた後の打って
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