返辞の代りに呻き声が聞えた。と、戸が開いて支倉がよろ/\と出て来た。彼の口の廻りにはベットリと血がついて、右の拳からはタラ/\と血汐が流れて着物に垂れかゝっていた。
「どうしたのだっ」
渡辺、石子の両刑事は同時にそう叫んで、両方から彼を押えた。
「うむ」
支倉は苦しそうに喘いだ。
かつて彼が銅貨を呑んで自殺を計って以来、再びそんな事をさせないように、厳重な警戒をしていたのであるから、刑事はこの有様を見て、只怪しみ驚く許りだった。
急報によって直ぐ警察医は駆けつけて来た。
取調の結果、支倉は便所の窓硝子を打欠いて、その破片を呑んだのである事が判明した。
医師は一応診察した後、以前銅貨を呑んだ時のように、大した障りのない事を断言した。
こんな事がいきり立っている刑事に素直に受入れられる筈がない。
「畜生」
渡辺刑事は叫んだ。
「野郎又狂言自殺をやりやがったなっ」
「硝子なんか呑んだって死ねるものかい」
石子刑事も口惜しそうに云った。
「そんな詰らない真似をして取調を遅らそうとしやがる。誰がなんと云ったって、きゃつが放火や殺人罪を犯している事は確実なんだ。白状させずに置くも
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