師は事件から手を引いて終った。叔父の定次郎は其後もチョイ/\支倉の家へ強請《ゆすり》に行ったらしい。小林貞が病院へ行く途中から姿を消したのはそれから間もなくであった。
神戸牧師は貞が行方不明になったと云う事を聞いた時に、あの強慾な叔父がいずれへか売飛ばしでもしたかと思って、憐れに感じたが、然しそれ以上に穿鑿する義理合も好奇心もなかったので、そのまゝにしていたのだった。支倉はその後時折神戸氏を訪ねて来た。
以上が神戸牧師が警察に出頭して陳述した要点だった。支倉の妻の静子がこの事について申述べた所も略《おおよそ》同様であった。
拘引以来三日間何事を問われても知らぬ存ぜぬと云い張っていた支倉は、又しても今日午後から刑事部屋に引出されて、石子、渡辺両刑事に調べられていた。
「おい、白ばくれるな、小林貞はどこへ隠したのだっ。早く云え」
短気の渡辺刑事は怒号していた。
支倉は相変らず黙々として冷やかな眼で刑事の顔を見上げていた。
「証拠は充分に上っているのだぞ」
石子刑事は歯がみをしながら云った。
「だまっていればいる程損なんだ。立派に白状すれば情状酌量と云う事がある。お前が強情を張る
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