た。警察当局者の考えでは支倉の犯した数々の罪、前後三回に亘る放火だとか、女中小林貞の殺害など必ず静子が知っているものと信じていたのだった。この女の口を開けさえすれば片が附くと云う考えだったから、この取調べは可成峻厳に行われたのである。
支倉の訊問は彼の妻の訊問と平行して行われたのだったが、知らぬ存ぜぬ一点張りで押通した彼も、この妻の訊問には可成苦しんだものらしい。彼が後に自ら大正の佐倉宗五郎なりと気狂いじみた事を云い出したのも、或はこの時の事を指しているのかと思われる。
彼女の訊問は前に云った通り三日続いた。然し、彼女はよくそれに堪えた。彼女は相当教養もあり、支倉も彼女に対しては十分尊敬を払っているようであり、夫婦仲も好いと思われるのだから、大抵の事は支倉も打明けるだろうし、打明けないまでも或程度まで察しがつくだろうし、どうでも支倉のやった事を知っているに違いないと云うので、刑事達は交る/″\厳重に彼女を責め立てたのだった。が、事実は彼等の予期に反して、彼女の口からは何事も聞く事が出来なかった。どうせ夫の大事を軽々しく喋る女ではないと云う見込ではあったけれども、こうまでしても口を開
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