持っていたとか云うが――」
「毒薬は無論第一に取上げました」
「では、急病でも起したと見える」
主任は飛んで来た刑事を振り向いて、
「直ぐ医者を呼んで呉れ給え」
「承知しました」
刑事が出て行くと、主任はすっくと立上った。
「おい、見に行こう」
一同がうち連れて独房の前に立つと、薄暗い不潔な箱の中で、支倉が顔蒼ざめて手足をバタバタさせながら呻吟していた。
「どうしたのか」
大島主任は独房の中を覗きながら声をかけた。
「うーむ」
支倉は然し答えようともしないで唸り続けていた。
石子刑事は檻の中に這入って、支倉を抱き起したが、彼は蒼い顔をして苦悶をしているだけで、吐血した模様もない。
「どうしたんだ」
石子は呶鳴った。
「うーむ、苦しい、俺は死ぬんだ」
支倉は喘ぎながら答えた。
所へ急報によって警察医が駆けつけて来た。
小柄な老医は支倉の脈をじっと握っていたが、
「どうしたんだね、腹でも痛いのかね」
と優しく聞いた。
「えゝ」
支倉はグッタリしながら答えた。
「そうか、抛っときゃ治るよ。大した事じゃない。何か悪いものを食べたのか」
「えゝ、呑んだのです」
「呑んだ
前へ
次へ
全430ページ中197ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
甲賀 三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング