いつはある事無い事を喋るのです」
「無い事なら恐れるに及ばんじゃないか」
「そりゃそうですけれども――」
「渡辺君」
根岸はもどかしそうに声をかけた。
「いつまで愚図々々と一つ事を聞いていたって仕方がないじゃないか。早くお篠を呼び給え」
「承知だ」
渡辺は勢いよく答えた。
「直ぐ行くよ」
「ちょ、ちょっと待って下さい」
浅田はうろたえ出した。
「あんな碌でなしを呼んだって仕方がありません」
「おい」
根岸は浅田をギロリと睨みつけて、
「貴様は何か女房に喋られて悪い事をしているな」
「そんな事はありません」
「支倉の逃亡を援助しているだけなら何もそう女房を恐れる筈はない。どうも一筋縄で行く奴ではないと思っていたが、貴様は何か大きい事をやってるな」
「決してそんな事はありません」
「そうに違いない。すっかり洗い上げるから覚悟しろ」
「え、そんな覚えはありませんけれども」
浅田はあきらめたように云った。
「こうなっては仕方がありません。何もかも申上げましょう」
何もかも申上げましょうと云った浅田の言葉に根岸刑事は心中大いに喜んだが、素知らぬ顔をしながら、
「そう素直に出れば何も
前へ
次へ
全430ページ中154ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
甲賀 三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング