合せた。

 石子刑事の意外な報告に署長は思わず司法主任と顔を見合せたが、やがて静かに云った。
「君、そう興奮してはいかん。もう少し落着いて委《くわ》しく話して見給え」
「はい」
 石子は余りに狼狽《うろた》えた自分の姿を少し恥じながら、
「先刻大崎の墓地から白骨になった死体を発掘して、鑑識課へ持って行きました事は主任から御聞きの事と存じます。私は一人残りまして結果を待って居りました。恰度居合せました医者は小首を捻りながら、
『どうも可笑しいぞ。之は女の死体じゃない』
と申して居りましたので、少し心配して居りますと、所へ外の用件で見えた帝大の大井博士が御出になりまして、じっと暫く見て居られましたが、
『君、之は男の骨だよ。而も老人だ』
と云われたのです。外の人と違って、博士の鑑定せられたのですから絶望です」
「うん、そうか」
 署長はうなずきながら、
「つまり掘った死体が間違っていたのだね。問題の池田ヶ原の井戸から上った死体が男だったと云う訳ではないだろう」
「はい」
「そうすればその井戸から上った女の死体は墓地のどこかに埋まっている訳じゃないか」
「はい。そうです。高輪署の記録が違っ
前へ 次へ
全430ページ中141ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
甲賀 三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング