動車が勇ましくエンジンの響きを立てゝいた。車には大島司法主任、石子、渡辺両刑事以下四、五人の刑事と制服の巡査、案内役の人夫などがいずれも顔面を緊張させて乗込んでいた。彼等は大崎の墓地に死後半年に発見せられ、埋葬後三年を経過した他殺の嫌疑ある死体を発掘に向うのだった。
 やがて自動車は爆音けたゝましく疾駆し始めた。

 大空はドンヨリ曇って、その下を鼠色の怪しげな形をした雲が不気味な生物のように、伸びたり縮んだりしながら、東北の風に吹き捲くられて西南へ西南へと流れて行った。
 広々とした稍小高い丘に大小取交ぜ数百基の墓石が不規則に押並んで、その間に梵字を書いた卒塔婆の風雨に打たれて黒ずんだのや未だ木の香の新しいのなどが、半《なかば》破れた白張の提灯などと共に入交っていた。墓石の周囲の赤黒い土は未だ去りやらぬ余寒の激しさに醜く脹れ上っていた。遙に谷を隔てた火葬場の煙突からは終夜《よもすがら》死人を焼いた余煙であろう、微に黄ぽい重そうな煙を上げていた。墓地には殆ど人影はなかった。
 折柄、墓石の下に永久《とこしえ》の安い眠りについている霊を驚かすように一台の大型自動車がけたゝましい爆音を上げ
前へ 次へ
全430ページ中135ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
甲賀 三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング