の地所内で行われるのだが、墓標などは元より何一つ印が立っていないのだった。
 三年前の井戸から上った屍体が果してどの辺に埋めてあるのやら恰《まる》で見当がつかないのである。と云って片っ端から掘っては、どの屍体がどれやら証明する手段がない。要するに誰かその屍体はこゝに埋めたと云う事を知っているものゝ智恵を借りるよりない。
 石子刑事はハタと困った。
 彼は兎に角、この墓地で長く墓掘《はかほり》人夫をしているものを物色した。幸に二、三人の人夫を尋ね出す事が出来た。けれども三年前の屍体だと云うと、いずれも云い合わしたように、
「さあ」
 と小首を傾けるのだった。
 石子刑事は躍起となった。折角自分が云い出して、署長始め司法主任も進んで発掘に賛成したのに、いざと云う場合になって埋葬箇所が分らないではすまされない。彼は共同墓地を中心として熱心に心当りを尋ね廻った。そうして其日の夕刻彼は漸く一人の墓地人夫を探し当てゝ、朧気《おぼろげ》ながらに当時の有様を知る事が出来たのだった。
「えーと」
 人夫は真黒な皺だらけな顔を仔細らしく傾けながら、
「そうです、もう三年になりますよ。暑い時分でした。井戸か
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