物に近寄るようにジリ/\と彼女に迫った。
「何をなさるのです」
 静子は必死の力を振って叫んだ。
「し、失礼な事をなさると、声を揚げますよ」
 然しそんな努力は反って薪に油を注ぐようなものだった。彼女がこう叫んだのをきっかけに浅田は飛びかゝった。
 静子は一生懸命に身を※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]《もが》いた。然しそれは畢竟《ひっきょう》猫に捕えられた鼠の悲しい無駄な努力だった。浅田はジリ/\と彼女を羽交締めにした。
 静子は繊弱《かよわ》い女の身の弱い心から、殊に対手は今まで親切にして呉れた浅田ではあるし、声を挙げて女中を呼ぶ事は幾分躊躇されたので、黙って身を※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]いていたので、浅田はそれにつけ込んで彼女を押倒そうとした。彼女は最早忍んでいられなかった。救いを呼ぼうと思ったとたんに、遠く離れた所だったが、足音がした。
 浅田ははっと彼女を抱きしめていた腕の力を抜いた。その隙に彼女は逃げ出した。浅田は直ぐに彼女を追った。格闘が始まった。襖が外れてドタンバタンと音がした。
 バタ/\と誰やら駆けつけて来る音がした。

 静子は必死
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