@    Proverbe.
         Il faut d'abord avoir soif……
―Cathe[#アクサン(´)付きのe]rine de Me[#アクサン(´)付きのe]dicis.

      

私はも早、善い意志をもつては目覚めなかつた
起きれば愁《うれ》はしい 平常《いつも》のおもひ
私は、悪い意思をもつてゆめみた……
(私は其処《そこ》に安住したのでもないが、其処を抜け出すことも叶《かな》はなかつた)
そして、夜が来ると私は思ふのだつた、
此の世は、海のやうなものであると。
私はすこししけてゐる宵の海をおもつた
其処を、やつれた顔の船頭は
おぼつかない手で漕ぎながら
獲物があるかあるまいことか
水の面《おもて》を、にらめながらに過ぎてゆく

   II
昔 私は思つてゐたものだつた
恋愛詩なぞ愚劣なものだと

今私は恋愛詩を詠み
甲斐あることに思ふのだ

だがまだ今でもともすると
恋愛詩よりもましな詩境にはいりたい

その心が間違つてゐるかゐないか知らないが
とにかくさういふ心が残つてをり

それは時々私をいらだて
とんだ希望を起させる

昔私は思つて
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