ノおはしなば!

     ※[#ローマ数字2、1−13−22]

私は御身を信じます、聖なる母よ、
海のアフロヂテよ!――他の神がその十字架に
我等を繋ぎ給ひてより、御身への道のにがいこと!
肉、大理石、花、※[#濁点付き片仮名ヱ、1−7−84]ニュス、私は御身を信じます!
さうです、『人の子』は貧しく醜い、空のもとではほんとに貧しい、
彼は衣服を着けてゐる、何故ならもはや貞潔でない、
何故なら至上の肉体を彼は汚してしまつたのです、
気高いからだを汚いわざで
火に遇つた木偶《でく》といぢけさせました!
それでゐて死の後までも、その蒼ざめた遺骸の中に
生きんとします、最初の美なぞもうないくせに!
そして御身が処女性を、ゆたかに賦与され、
神に似せてお造りなすつたあの偶像、『女』は、
その哀れな魂を男に照らして貰つたおかげで
地下の牢から日の目を見るまで、
ゆるゆる暖められたおかげで、
おかげでもはや娼婦にやなれぬ!
――奇妙な話! かくて世界は偉大な※[#濁点付き片仮名ヱ、1−7−84]ニュスの
優しく聖なる御名《みな》に於て、ひややかに笑つてゐる。

     ※[#ローマ数字3、1
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