腹全体を塗りつぶして、あとから表を返して見て、驚く事があります。こんな時には、臍の部分だけ、あとから絵具を、アルコールで拭い取らなければなりません、地塗りとか、空とかバックなどは、最後の仕事です。樹木などは、葉の一枚一枚の点々は先きに、葉の全体の固まりは、後から塗ります。道路の点景人物は先きに、石ころも先きに道全体の色は、最後に塗りつぶさねばなりません。
 時々裏返えして見て、仕上って行く絵の調子を眺め、次の仕事を考える必要もあります。あまり度々裏返えして見てばかり居ると、勢や気合いが抜けて絵が大変いじけて了うものであります。ある程度までは、度胸や胆力が必要です。
 処で仕上った絵は、実物の風景とは、左右が反対になっています。丁度エッチングの場合と同じ事であります。
 絵具の塗り方は、あまり厚くぬらない方がいいのです。なるべく淡く、サラサラとつけて行く方がよろしい。ガラスの透明を利用してタッチを表わす工夫をするとよいのです。或は淡い、絵具を二三回も重ねて、重く濃厚な部分や、軽く半透明な場所なども作るのです。すると、ガラス特有の味が出るものです。
 顔料に就いては、油絵具を用いた場合も、
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