てあるものがある。そして風景だけは描かれている。俗っぽいものだがその考案に愛矯が持てる。
 支那国産的な画風を持つものに私はもっとも美しい美人絵や静物の類を発見する。また鏡台とか手箱の類の引き出しのなかから数枚のエロチックが現れるものもある。私が近頃支那の土産としてもらったものなどは、ほとんど紙に類する程度のうすきガラスに描かれている男女の絵だった。そのうすくて波打てるガラスはまた格別の味を感ぜしめる。
 支那風のガラス絵のガラスはいったいに、質がうすくて波を打っている。泡がある。私は近頃だんだんその波と泡あるうすきガラスに興味をそそられる。
 同じく支那出来のものの中には、西洋画のコピーがはなはだ多い。それは何かつまらない輸入絵とか版画類からの模製と思うが、この種類の中にはずいぶん美しいものが多い。陰影と調子が深く応用されていて、むしろその原画のつまらないものを支那人の心と手とガラスの効果によって、それを宝玉にまで翻訳したというべきものがある。
 私は近頃では主として支那出来のものに興味が傾いている。
 フランス、ドイツにおける新しい画家でガラス絵を試みるものあると聞くが、私はその作
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