えいじ》の如く。
小児の傑作が長ずるに従って消滅するのも子供は絵画の組織を持たないからであるといっていい。
6 近代の心と油絵の組織
油絵というものが西洋に生れ、西洋人の要求と生活から湧《わ》き出してから古き歴史を持ち、やがて素晴らしい時代が来、大天才が輩出し、その時代時代において花を咲かせ実を結び、あらゆる人間の要求によって、あらゆる画風を生じ傑作を無数に残し、その技法は完全に研究され絵画の組織は充分に備《そなわ》り過ぎる位いに備ったのである。故に油絵技法とその組織というものは、私の考えによると、十六世紀の時代においてその全盛期であり、油絵技法の最頂点を示し、その時代と人間の生活との親密にして必然の要求による結合と、無理のない発達の極度にまで達しているものであると思う。
それ以後の西洋にあっては、伊太利《イタリア》、フランスの別なく、油絵芸術は習慣と惰性とによって、ともかくも連続はしていた訳であるが睡気《ねむけ》を催すべき性質のものとなり、芸術としての価値は下向して来た事は歴史に見てもその作品に見ても明《あきら》かである。
私は、ここに西洋絵画史を述べる暇と用意
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