からといって、鼻が両者を結びつけている。それだけでは少し下方が空き過ぎるところから、口をもって締めているのである。両眼の上と鼻の下にはまゆとひげが生じて唐草の役目を勤めている。まったく顔はよき構成である。
次に胴体である。再び左右のシンメトリーを保つ美しい半球の乳房である。その上にある二つの桃色の点である。それから腹である。もしあの腹に臍という黒点がなかったらどうだろう。あの腹は大きな一つの袋とも見えて随分滑稽なものだろう。その下では線が集まって美しい締りをつけてある。次に両足だ。これがまた中央は垂直線、外側が斜線である。下へ降りる途中があまりに長いからというので膝においてよろしき位のアクサンがある。それから両足となって地上に落着くものである。五本ずつの指ともなる。このよろしき構成はあらゆる絵の構図のよい手本であり、相談相手ともなりはしないだろうかと思う。
よき構図は左様に人間の五体の釣合の如く、樹木の枝の如く、音律のよき調和の如く、美しい縞柄の如く、画面の上にすこぶるよろしく保たれたところの明暗と物と物と、色と色と、形と形と線と線とのもっとも都合よきリズムの調和であらねばならない
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