絵具をニスの類を交えてペンキのごとくして用いられていると考えられるものもある。
 現在でもなお朝鮮で作られているところの手箱や箪笥の扉等の装飾のために嵌め込まれたもので水牛の角を薄くセルロイドのごとく透明となし、これに山水鳥獣がおもしろく描かれてあるのを私は見た。それはやはり泥絵具と墨であり絵具は膠で固められているようだ。
 私はガラス絵を観賞する興味も持ってはいるがしかし私は自分でガラス絵を描いてみたいと思う心が強いので結局、めんどうがなくてすぐ手もとにあるところの油絵具を用いて描くことを考えた。それには私はメディアムとして速乾漆液をそのまま柔らかな日本風の彩色筆に含ませて油絵具をきわめて薄くほとんどお汁《つけ》の状態にまで溶解してガラス面へ塗って行く方法をとっている。
 それがもっとも効果がよく、第一早く乾燥するので短気な私にとっては都合がいい。その代わりあまりに早く乾燥するので多少ぼかしはやり難いが、これは熟練によらなければならない。
 筆洗いとしてはアルコールを用いている。手のよごれやガラスの掃除にも重宝である。
 しかしながら多少の大作でもやるとすれば速乾漆液では乾きが早過ぎて不便だ。やはり日本絵具を膠で溶解してゆっくりと描いて行く必要があると思う。
 しかしながら私の考えでは、ガラス絵はなるべく小品のミニアチュールとして、手のひらへ乗せて味わう程度のものがもっとも好ましいものであると思う。それのためには油絵具がもっとも調子の深さを表すためにも便利である。
[#地から1字上げ](「美術新論」昭和五年六月)

   私のガラス絵に就いて

 私は前述べました如く、此の美しい効果を持つ技法を、も一度生かして、もっと画家の仕事へ引き入れて、吾々が水彩やグワッシュを用いる如くガラス絵を試みる様にし度いと思うのであります。それで私は、ナルべく簡単で便利な方法を、種々工夫して見たのです。

     私が目下便利だと思って使用している製作材料

 (A) 油絵具使用の場合
[#ここから2字下げ、折り返して10字下げ]
顔料(油絵具) を用います、普通油絵に使うだけの種類は必要です。
  (金銀泥) 泥は大変美しい装飾的効果を現わすものです、私はよく金泥で署名をします。
[#ここで字下げ終わり]
 油[#以下「A」と「B」は「油」の下で二行に分かれ、「A」「B」の下に上
前へ 次へ
全81ページ中39ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小出 楢重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング