こんなものを探しているわけではないのだ、私の本当の心は新しい作品には新しいものをつけたいと思うのだ、ただ好きなものがないので苦労するのだ。
 山下氏などは西洋形式を取り揃えて研究されているらしい、そして自分で木を削り彫刻を施して気のすむまでいじくっていられるようだ、なかなかいい味の本すじのものが出来上がっているのを私は見る。
 ところで山下氏の如く本すじのものが出来れば結構だが、ある伝統の様式を知らないものが手製を試みることはむしろ止めてほしいものだと思うのだ。私はしばしばでたらめな文様を施した手製の縁をみたことがあるが、それは非常に嫌味なもので落着かぬものだと思った。
 帽子屋の帽子は皆気に入らぬからといって、毛糸か何かで頭巾様のものを妻君に作らせて冠っているようなもので、嫌味でとても見ているものは堪らないのだ。ここがむずかしいところだ。いい縁は必要だが、手製のでたらめを作る位ならばむしろ万屋で買った山高帽子の方がいくら嫌味がなくていいかも知れないのだ、だから凝らない方がよっぽどましだということになるのだ。
[#地から1字上げ](「マロニエ」大正十五年一月)

   黒い帽子

 私
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