鼻糞とか鼻の脂などが存在しているのと同じようなもので、それが素敵な美人であって、若くあるところの娘の鼻に必ず存在するところのものであるから悲しい。だから美人の要素としては鼻の中の掃除などははなはだ重要な事柄だろうと思う。
ある時、芸者が三人集まっての雑談中ふとどんな男を一生の相手として選んだら一番幸福だろうという問題が出た。するとその一人が私は隅々のきれいな人なら大丈夫だと思うと答えたそうだ。すなわち耳穴、鼻の穴、目くそ、歯くそ、フケの類、爪のあか、こんなものを蓄めている男は、不吉と不運の神様だということに話がきまったそうである。沢山の人間を取り扱っている女達の鑑別法もなかなか面白いものだと思ったことがある。
要するに美人の鼻糞はわれわれのフケ同様、人間の作った芸術にこの嫌味という味がどうも出たがって困るのだ。また人間の心の一部にちゃんと存在していて、そこから発散する臭気なのだから致し方がない。人間の生きている以上は湧き出してくるところの生きるという力の余りものだと考えてもいいと思う。この余りものがうっかりすると芸術にそのまま現れるのだ。
それで人間はいくら美顔術をやっても絶対に
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