る、毎日むきな顔をしてモティフをにらみつけて、深酷を看板としているとまったくもってやりきれないことになることがよくある、また出来る絵も正統かも知れないがあくびの出るような絵がそんな場合にはよく産出されるものである。また技巧の問題や表現の方法などについても、行きづまってこれもあくびよりほか致し方のないことになる場合が少なくない。
 こんな時は食事でいえば午後三時頃とか、夜の十時過ぎとかであって、正当なめしよりもむしろちょっとカフェーにでも入って何かたべるのがいい考えかと思う。そして美人なども眺めることが出来て、大いに見聞をも広めることが出来るのである。絵もその通りでちょっといわゆるつまみ食い、あるいは間食という奴をやることはなかなか元気を回復させて、また一種の世界を発見させるものである。しるこやカフェーだけで生命をつなぐことはむずかしいかもしれないが、気鬱を起こさしめない必要品である。
 そんな意味からでも画家は油絵の一点張りではまったくやりきれない。時には水彩もやってみたくなればグワッシュもやりたくなる、あるいはエッチングをやるのも面白いだろうし、木版を彫ってもいい、あるいは素描パステ
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