力でも親の力においてさえも、この横わりたるこの心は、動いてはくれないのだ。従ってこの問題を解こうなどという柔順な気もちには決してなれないのだった。
 その上、私はまた小さな時分から、いろいろな雑念に悩まされる人間であった。雑念といってもいろいろとあるが、一例を挙げると、今は田舎にのみ残っている処の、祭礼に引き出す地車というものがあった。この囃子《はやし》が私は大好きだった。鉦と太鼓でチキチン、コンコン、といった調子が連続するのだ。それから芦辺《あしべ》踊りとか都踊りの囃子も大好きだった。ずらりと並んだ舞子たちが、キラキラと光った鉦を揃《そろ》えてたたくのだ、チャンチキチン、コンコン、というのだ。これが馬鹿に華やかで気に入って、心の底へ浸《し》み込んでしまったのであった。
 私はこの、チャンチキチンのために、ますます算術が馬鹿々々しくなって来るのであった。
 大工あり、日に何時間と読むうちに、何んだつまらないと思うと同時に、チャンチキチンの囃子が猛烈に始まるのだった。こうなると問題も試験もくそもなく、ただ私はチャンチキチン、なのだ。
 先生はさように賑《にぎ》やかな囃子が、私の心に始まっ
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