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十二月五日 晩十一時半
今ズボンをたたんでいて、一寸考えた事であるが、日本を出る時にセンベツにもらった品物の中で、何が一番重宝で役に立っているかと云うと、おとよはんとこのお師匠はんに貰ったズボンツリだ。あんないいものはフランスにも無い。今度会うたらお礼申しといてくれ。毎日つかわぬ日は無い。
それからお玉はんにもらったものも記憶しているが、氷砂糖だ。毎晩湯をわかしてのむ時に、あれを一つ入れてのむ。正宗、岡田なぞ近所から毎晩のみにやってくるんだよ。全く、何が重宝だか、来て見んとわからんもんや。氷砂糖なぞは印度洋ですててしまうつもりだったが、中々御恩に預かっている次第だよ。
一番弱ったのは、ケーキだ。船の中ではケーキなぞに不自由しないので、スッカリ忘れてしまって、印度洋で思い出してあけて見たら一寸程カビが生えて、のび上っていたよ。まっくろけだ。印度洋へ水葬にしてやった。
十二月十六日
今晩、手紙(おかアさんと吉延さんとから)を落手。何しろ、二ヶ月以前に僕がかいた手紙の返事を、今見る事であるから、ずい分ヒマのかかる仕事だ。頭をなぐられてから二ヶ月目に痛
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