部屋の隣りにあるので、皆は洋服のままやって来て、風呂から上ると、すぐ靴をつけねばならぬが、俺はシャツ一枚で、ドアをあけて隣りへとび込める様に出来ているので、バスだけは、至極便利を感じる。部屋はスチームで、ずい分温くいから、風呂へ入っても、あとはシャツ一枚でベッドへころがっていれば、いい心もちにウトウトとなってしまう。まるでベルリン迄湯治にでも来ているかの様な心地さえする。西洋の家は冬向きは実に暖かくていい。これなら、いくら北欧の寒国でも余りつらい事はなさそうだ。外出するのは少し寒いが、大抵自動車かホロ馬車だから楽なもんだ。もうベルリンの町も、まるで京都か大阪位に住み馴れて来た。もうパリもよく勝手がわかったし、ベルリンも京都よりも詳しくなってしまった。
いくら、然し、ベルリンでもマルクが下っていて、ものが安く買えても、自動車に、ただの様な金でのれても、ほしいものが買えても、食い度いものが食えても、ぜいたくのありたけが出来ても、それが一向に、有がたくも感じない。実にハリ合いのない楽しみだ。自分一人でどんな事が出来たって、それは、まことにくだらない、馬鹿気たもんだよ。
十一月九日
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