けはもうこれはだめだからよす方がいい。とても、あの洋服を、仕入れの奴を買って帰って着たら、大変、変てこなものになって、話しにならぬ。これは外国へ来てツクヅクと思うた事だが、日本人には、日本服程よいものはないよ、洋服の仕入でからだに合わぬ程いけないものはない。よく人が西洋へ行ったら、日本で作った洋服はミットモなくて、一日も着てあるけない、仕入の安いのをすぐに買って着れば、その方がズットよい、などと聞いたもんだが、どうしてどうして、オバーを一つ、パリの三越の様な処で買ってみたが、とてもだめだよ。これこそ、みっともなくて着られない。だから今に、日本で作ったのを平気で着ている。その方がズットいい形なんだよ。
洋服も日本が中々うまくなっているんだそうだよ。
靴も日本のが一番よい。ドイツの靴をあまり安いので買うたが、買ったその日に、水が入ってくる次第だ。今は中々日本も馬鹿にならんのだ。
洋服(茶)と黒のオバーとを、この間からベルリンの洋服やへ注文して置いたら、今日かりぬいをやってくれた。あと四五日で出来上る。これが出来たら、ドイツ風でパリへ帰るつもりだ。パリの洋服は、一ツぼたんのハイカラだが、キザな服なんだから、おれは大キライだ。オッチョコチョイで。
ドイツとパリとで、見当り次第に、何かおみやげになるいいものを買って帰る事にする。
中々、買物も骨が折れるもんだよ。本とかエノグとかなら、自分でわかるけれども、何しろ女のもんは六つかしい。そして、時々テレクサクて、立派な宝石屋なぞへ入れない気がするよ。
十一月十四日
急に寒い日が来た。朝目をさましたら、まっ白に雪が積っていた。然し、部屋の中は、スチームの為めに暖かだから、丁度汽車にのって、雪見をしている様なものだ。外出するとさすがにつめたい、すばらしくつめたい。然し雪が降る前よりも、つもってからの方が温い。
日本の雪の様に、すぐとけない。何日経っても、決してとけない。丁度白い砂がつもっている様なものだ。夜になると、石畳みの道に、いてついてしまって、氷すべりが出来る。子供がソリを持ち出して遊ぶ。雪が溶けないから、あまだれが決して落ちない。そのうちに雪の色がだんだんよごれて、灰色になってくる。あまり美くしいものではない。西洋の雪は、大味だよ。然し、ドイツらしくて面白い。やはりドイツは冬が来なくては、ほんとにドイツらしい
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