│ Chez Mr. T. Mikawa, │
│ 3 Rue Beudant 17em. Paris France. │
└────────────────────┘
でよろしい。
落付いたら、ゆっくり、詳しく通信する。
まだ、日本から美川君の方へ一向手紙が到着していないので、大阪の事情が一向わからず失望した。八月六日出の、吉延さんからのハガキだけは落手した。
通信を望むよ。電報は一度かけるのに百フラン、一寸二十円程かかるので、あまり沢山うたずに、ケンヤクして、三休橋宛に一つだけ打った。何れ後便にて。
ゴテゴテしている処へ、新聞なぞ見た事ないので日もわからぬ。
九月二十七日 巴里より
やっと、今日は巴里の一人歩きをやって見た。乗合自動車へ一人でのって見た。昨夜、美川君のうちで手製のめしをたいて貰って、牛肉でよばれた。いい家だ、三階で三間程ある。日本でだったら大変なものだ。あまり話し込んで遅くなったので、そのまま泊り込んでしまった。
美川君は来年の三月の末頃に、アメリカ経由で帰るそうだ。丁度僕の帰ると同じ時せつに日本へつく事になるらしい。僕は三四月頃の船を注文するつもりだ。三ヶ月前に注文すればよいそうだ。それより早くは帰るかもしれんが、遅くはならぬ事は確かだ。巴里の絵なぞは一向につまらないものが多い。僕が日本で考えていた通りだ。来月の末頃まではいろいろの展覧会などがあるから、巴里に居て、それからドイツへゆく。
美川君もるすになるといけないから、やはり日本人クラブの上記の方がよろしい。何しろ上記の通りかけば来ます。
セーヌ河の古本屋、五階下の様なガラクタを売る店で、今日は面白いフランスの名所絵の銅版画の色ズリを四枚買って来たよ。
巴里に居る間にいろいろ珍らしいものを買っとき度いと思う。
大分道の勝手もわかって来たが、語は中々通じない。何を云っているのか少しもまだわからぬ。然し、下宿のおかみさんに朝飯の注文と、風呂の注文と、道を聞く位の事は出来る。
巴里の千日前の様な処へ行くと、盛んな踊り場があって、その騒ぎはとても想像が出来ない位のもんだ。
バルタバラン、オリンピアなどへ二三べん見に出かけた。これだけは日本から遠めがねで覗かせたい。
パリの女の服装はずい分安いものを着ていて、美くしく見せる事は
前へ
次へ
全76ページ中60ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小出 楢重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング