り。この旧き誡は始めよりなんじらが聞きしところの道なり。されどわれがなんじらに書き贈るところはまた新しき誡なり。
        ――ヨハネ第一書第二章より――
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 版を改むるに際して

 この書は発行以来あまねく、人生と真理とを愛する青年層の人々に読まれて、数多くの版を重ね、今もなおあわただしい世相の動きにも、自己本然の真実の姿を失うまいとする、心深く、清き若き人々の間に読まれつづけている。
 私はその生命の春に目ざめて、人生の探究に出発したる首途にある青年たちにはこの書がまさしく、示唆《しさ》に富める手引きとなり得るであろうことを今も信じている。私が恃《たの》みを持つのは思想的内容そのものよりも人生に対する態度である。いかなる態度をもって生きゆくべきか、その誠と力とラディカルな自由性とは今の青年たちに感染してけっして間違いないであろう。この書はたとい思想的に未熟と誤謬とを含んでいる場合にも、純一ならぬ軽雑な何ものをもインフェクトせぬであろう。私は反語とか諷刺《ふうし》とかの片鱗をもって論述を味わいつける、大家にも普通なレトリックさえけっして
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