、源介の胸へしがみ付いている。
 源介の魂は宙へ飛んだ。で、むやみと口嘗《くちな》めずりをした。「こ、こ、こいつア悪かあねえなあ。ううん偉いものが飛び込んで来たぞ。まず俺の物にして置いて、品川へでも嵌《は》めりゃあ五十両だ」
 こう思ったそのとたん、女はヒョイと胸から離れ、まず衣裳の乱れを調《ととの》え、それから丁寧《ていねい》に辞儀をした。
「あぶないところをお助けくだされ、何んとお礼を申してよいやら、ほんとに有難う存じました」
 切り口上で礼を云った。
「へえ、ナーニ、どう致しやして。でもマア怪我《けが》もなかったようで、いったいどうしたと云うんですえ?」
 相手に真面目に出られたので、つい源介も真面目に云った。
「はい、ちょっと主人の用事で、新銭座の方まで参りましたところ後から従《つ》けて来た悪者に、……」
「ナール、空地でとっ[#「とっ」に傍点]捉まえられたんだね。で、お家はどこですえ?」
「はいツイそこの愛宕下で。……あのまことに申し兼ねますが、お助けくだされたおついで[#「おついで」に傍点]に、お送りなされてはくださいますまいか」
「またさっきの悪い奴が追っかけて来ねえもの
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