ように現われていた。
「人面疽《にんめんそ》」
 と叫ぶと一緒に、葉之助は小柄を引き抜いたが、グッとその顔へ突き通した。飛び散る血汐、焼けるような痛み、それと同時に人顔は消え二十枚の歯形が現われた。

         八

 それから間もなく引き続いて、怪しいことが起こって来た。それはやはり二の腕にある二十枚の歯形に関することで、そうして対象は紋兵衛であった。
 つまり紋兵衛と顔を合わせるごとに、二十枚の歯形が人面疽と変じ、そうしてこのように叫ぶのであった。
「お殺しよその男を!」
 すると不思議にも葉之助は、その紋兵衛が憎くなりムラムラと殺気が起こるのであった。しかしさすがに刀を抜いて討ち果たすところまでは行かなかった。
「歯形といい人面疽といい、恐ろしいことばかりが付きまとう。俺は呪詛《のろ》われた人間だ」
 そうして尚もこう思った。
「大鳥井一家とこの俺とは、何か関係《かかりあい》があるのかも知れない。いったいどんな関係なのだろう? よくない関係に相違ない。いわゆる精神転換前の俺というものを知ることが出来たら、その関係も解るかも知れない」
 しかし彼には精神転換前の、自分を知る
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