具師は訊いた。
「うん」宗春は顎を杓った。「江戸の吉宗奴が俺を疑い、町奉行の大岡越前奴を、隠密として入り込ませたそうだ」
「あっ!」と香具師はのけぞった[#「のけぞった」に傍点]。「ひええ。大岡越前守様が!?[#「!?」は1マスに横並び]」彼の顔色は一変した。「で、殿様のご対策は?」
「逆手を使って越前奴を、今夜城中へ招くことにした」
宗春は不意に立ち上った「香具師来い! お半も参れ! 約束の天主閣を見せてやろう。……気が結ばれてムシャムシャする。天主へ上って気を晴らそう。高きに上って低きを見る。可い気持だ、さあさあ来い!」
荒々しく宗春は部屋を出た。
二人は後へ従った。
御殿から出ると後苑[#「後苑」は底本では「後宛」と誤記]であった。西北に小天守が立っていた。小天守の中へ這入って行った。東に進むと廻廊があった。それを真北へ進んで行った。その行き止まりに天主閣があった。入口に固めの番士がいた。宗春を見ると平伏した。尻眼にかけて三人は進んだ。
這入った所が初重であった。南北桁行十七間、東西梁行十五間、床から天井まで一丈二尺、腰に三角の隠し狭間、無数の長持が置いてあった。網龕燈
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