個《いくつ》か森がある。長く続いた林もある。小山もあれば谷もあり、川も流れているらしい。灌木や藪が飛び散っている。山は斜面をなしていたが、登りはそれほど険しくはなかった。空を横切って小鳥が飛ぶ。遙かの山の頂きに、入道雲が屯《たむろ》している。晴れた空が海のように深く見える、山地特有の空である。
一行はズンズン進んで行く。
五町あまりも歩いたろうか、森は途切れたが林となった。林の左側に沿いながら、一行はさらに進んで行く。
と、今度は小山となった。山の斜面に瘤《こぶ》のように、うずくまっている小山である。小山の裾を巡りながら、一行は尚も進んで行く。
と、小山の反対側から、またも馬の鈴が聞こえて来た。
ところがどうにも腑に落ちないのは、物見に出て行った山本という武士が、いまだに帰って来ないことであった。
「どうしたのだろう、可笑《おか》しいではないか」
集五郎には不思議でならなかった。
「山本氏が帰りませんようで」華子に向かって不安そうに云った。
「そうだねえ、どうしたのだろう」
日光を遮って駕籠の中は、ボッと薄暗く煙っていたが、その中に浮いている華子の顔には、幽かながらも不安があった。「十や十五の子供ではなし、迷児《まいご》になったのではあるまいが、それにしても少し手間取り過ぎるよ」
「それに旅人の鈴の音が、小山の向こう側で聞こえております」
「もう一人物見にやってごらん」
「北条氏北条氏」呼ぶ声に連れて、北条という若い武士が、すぐに後列から走って来た。
「は、何事でございますかな?」二十五、六の武士である。
「お聞きの通り小山の向うで、馬の鈴音が聞こえております。どのような旅人が通っておるか、行ってお調べくださるよう」
「かしこまりましてございます」
北条という武士は馳せ去ったが、すぐに山の向うへ隠れてしまった。
一行はズンズン進んで行く。
四十八
小山と云っても丘のようなもので、高さから云うと知れたものであったが、その延長は著しかった。で、その裾に添いながら一行はズンズン進んで行った。
依然鈴の音は聞こえて来る。悠々と歩いていると見えて、その鈴の音もおちついている。
だがその鈴の音が急に止み、罵り合う声が続いて起こり、すぐに消魂《けたたまし》い悲鳴が聞こえ、同時に鈴の音が乱調を作《な》し、甲高く響いた瞬間から、局面が一変す
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