かりの金に換えようとしたし、杉次郎殿や弁太さんなどは、京助からあの品を取り戻そうとした私を、あんな塩梅《あんばい》に邪魔をしたが、それはいずれもあの品物の、素晴らしい価値を知らなかったからだ。私はお前さん達に正直に云うが、あの品物は今の私の家の、全財産よりも価値のあるものだ。それをお前達はよってたかって[#「よってたかって」に傍点]、私の手元からなくなしてしまった。……今になってはそれも仕方がない。で私はあれを取り返しに、飛騨の方へ旅をすることにした。お前さん達も一緒に行ってはどうか」
 こう云われてお菊や杉次郎達は、今さら自分達のやったことを、後悔せざるを得なかった。
 そうして彼らは勘右衛門と一緒に、その品物を取り返す旅に、出て行くことに決心した。
 とは云うもののお菊などは、飛騨というような山国などへは、こんな機会がなかろうものなら、生涯行っては見られないだろう。よい機会だから行ってみようという、そういう心理に動かされてはいた。
 また杉次郎は情婦のお菊が、旅に出かけて行くというので、別れるのが厭だという心持から、一緒に行く気になったのであり、弁太は弁太で行を共にしたら、うまい儲け口があるかもしれない。――そう思って行くことにしたのであった。
 勘右衛門にしてからが考えがあった。
(杉次郎や弁太はお菊をとり巻いて、よくないことをやっている。こいつらを江戸へ残して置いては、どんなことをやり出すか分らない。旅へ一緒に連れて出たところで、手助けにも何にもなりはしないが、江戸へ残して置くよりはいい)
 で、四人は旅へ出て、辿り辿ってこの曠野へまで、今や姿を現わしたのであった。
(本来あの品は二つある品だ。二つあると飛び離れた価値になる。刑部老人はその素性から、また商売の関係から、あの品物の二つあることを、心得ているに相違ない。その刑部老人が、飛騨の国へ来たのである。ではあるいは飛騨の国に、もう一つの品があるのかも知れない。それを得ようとして来たのかもしれない)
(そればかりか千賀子までも一緒に来たそうだ。千賀子に至ってはあの品物の、どういう品物であることか、どれだけの価値のあるものかを、自分の物のように知っているはずだ。その千賀子が刑部老人と一緒に、この飛騨の国へ来たのである。では、いよいよもう一つの品が、この国にあるものと見てよかろう)
 道々勘右衛門はこう思って、
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