しよう。
明日は沙漠へ向かうのだ。沙漠が私を呼んでいる……(備忘録下略)
七
「あの女を君はどう思うね?」
ラシイヌは小声で囁《ささや》いた。
「前から気がついてはいましたが、土耳古《トルコ》型の素晴らしい美人ですね――あれをモデルにして描きたいものだ」
「描かざる画家」のダンチョンはこれも小声で囁いた。ラシイヌはちょっと舌打ちをしたが、ニヤリと苦笑したものである。
「君の描きたいねも久しいものだ。描きたい描きたいというばかりで何一つ君は描かないじゃないか。だから皆が君のことを描かざる画家のダンチョンだなんて下らない綽名《あだな》をつけたのさ――あれほど君が意気込んでいた『獣人』の絵だってまだ描かない。ほんとに君はなまけ者だ……それはそうと向こうのあの女だが、君は変だとは思わないかね?」
「変だって何が変なんです?」
「そういう返辞が出るようなら君には向こうのあの女の変なところが解らないと見える。いいかいよっく見てみたまえ、今あの女は下を向いて熱心に新聞を見てはいるが、その実新聞を見ているのではなく僕らの様子を見ているのだよ」
「なんで僕らを見るのでしょう?」
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